膜タンパク質の4次構造解析と可溶化剤の選択

膜タンパク質は細胞の重要な成分です。膜タンパク質は全ゲノムの実質上3分の1ORFを占め、必須の役割を果たし、非常に多くの薬剤のターゲットとなっています。細胞内の天然の環境に存在するときは、膜貫通タンパク質は脂質2重層疎水性の部分を介して挿入されています。In vitroで性状解析を行うためには、膜からタンパク質を抽出し、それを可溶性で天然の状態に保つ必要があります。抽出は一般的に、界面活性剤と呼ばれる両親媒性の化合物を用いて行われ、いわゆるタンパク質-界面活性剤複合体(pdc)を生じる。膜タンパク質の中にはオリゴマーとして存在するものがあり、この高分子複合体を天然の状態のままに保つことが以降の研究で必須の課題になります。

 

 ここでは、膜タンパク質の4次構造を決定する方法と、精製過程でその構造が維持されているかを調べる方法について記述します。ゲルろ過(SEC)カラムの通常の検定法は、pdcでは容積や形が界面活性剤の部分にも依存するため、適用できないことがよく知られています。

 

 この方法を、2種類の界面活性剤を用いた古細菌Methanosarcina mazei CorAトランスポーターの4次構造の研究を例として見てみましょう。これと相同なCorAの結晶構造解析によれば、機能のあるタンパク質は5量体として存在し、膜を介したイオンの出入りに関与している。このタンパク質をLDAO中で精製した場合のSEC溶出パターン(CorALDAO, 図1)はDDMで可溶化したもの(CorADDM,図2)に比べてよりシャープで対称的です。

 

MALS、屈折計、280 nmの吸光度を組み合わせることによって、「2つの未知数を含む2つの方程式」を解くことができ、各pdc中のタンパク質と界面活性剤の分子量を決定することができました。驚いたことに、溶出パターンの良いCorALDAOの方が非天然の単量体で、CorADDMの方が天然の5量体を保っていました。

 

このエレガントな解析法は、結晶化や他の生化学的研究においてきわめて重大な問題である、天然の活性膜タンパク質の4次構造を維持するための、手のかかる活性試験を必要としない方法のヒントを与えてくれます。

 

図1. SEC/MALS/RI 法によるLDAOで可溶化して精製したCorA タンパク質の15 mLShodex KW804 カラムを用いた解析。この界面活性剤では単量体CorAのみが得られた。

 

2. SEC/MALS/RI 法によるDDMで可溶化して精製したCorA 15 mL Shodex KW804 カラムを用いた解析。この場合には、5量体の CorA が見いだされた。

 

本アプリケーションノートはDavid Veesler 氏の投稿によるもので、同氏のご厚意に感謝します。

 

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