ヘモグロビン

ヘモグロビンは、哺乳類の赤血球に含まれるタンパク質で、肺から酸素を体内の酸素を必要とする場所に運ぶ役割を果たしています。 脱酸素されたヘモグロビンは、二酸化炭素と結合してこれを体外に運び出します。 ヒトのヘモグロビンは4つのポリペプチドから成り、テトラマー(4量体)とダイマー(4量体)とが条件により異なる平衡状態となります。

サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)と光散乱検出器(MALS、miniDAWN)と示差屈折率検出器(Optilab DSP)を組合せた、SEC-MALSによりヘモグロビンのキャラクタリゼーションを行いました。

図1には、ヘモグロビンのモル分子量と溶出容量のプロットを示します。 ピークとクロスするところのモル分子量は一定ではありません。 これは、SECによる分析中に、テトラマーからダイマーへの平衡状態のシフトがあるためと考えられます。 従来のカラムによるキャリブレーション法では、通常のピークの広がりを、サンプルの小さな多分散とを区別することは、不可能とは言わないまでも相当に難しいといえます。

キャリブレーション用のタンパク質の標準サンプルとしては、牛血清アルブミン(BSA)が通常用いられます。 図2には、BSAとヘモグロビンのモル分子量と溶出容量のプロットを示します。ヘモグロビンとBSAのモノマーの分子量は非常に近いのですが、ピーク形状と溶出容量は相当に異なります。

ヘモグロビンは、BSAに比べてコンパクトな分子構造をしていますので、BSAの方が早く溶出します。 通常の場合に多くの研究室で行われているように、BSAを用いたキャリブレーション結果を用いてヘモグロビンのモル分子量を測定する場合には、ヘモグロビンのモル分子量をかなり小さく見積もることになってしまいます。 miniDAWNまたはDAWNを用いれば、容易にこのような間違いを防ぐことができます。

カラム2本を用いたSECとMALLS検出器を用いた、ヘモグロビンの溶出容量に対するモル分子量

図1:カラム2本を用いたSECとMALS検出器を用いた、ヘモグロビンの溶出容量に対するモル分子量。

分子量の近いBSAとヘモグロビン

図2:分子量の近いBSAとヘモグロビン。ヘモグロビンの分子構造がコンパクトなため溶出容量が違ってきています。

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