放射線照射アルギン酸ナトリウムの特性解析

食料品に放射線を照射することによりその保存性が高まるということは、周知の事実です。 食品添加物などに、広く使用されているアルギン酸ナトリウムは、その分子量特性が製品の品質、保存性に大きな影響を与えることがわかっています。

ここではアルギン酸ナトリウム(Sodium alginate)のガンマ線照射の影響による分子量の変化などのキャラクタリゼーションを、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)と多角度光散乱検出器miniDAWN(r)を用いて測定しました。 カラムは水系GPCカラムが用いられ、溶離液には100%H2O、流速は1.0ml/minで測定しました。

図1は放射線を照射する前のサンプルと、照射した後のサンプルの分子量の微分曲線です。 ピークトップの重量平均分子量(Mw)を比較すると照射後のサンプルは明らかに分子量が低下していることがわかります。 多角度光散乱検出器は分子サイズと分子量が各溶出容量について決定されると、溶液中での分子形状の変化を追跡することができます。

分子サイズの対数をY軸に、分子量の対数をX軸にとりプロットする事によって生じたスロープ(傾き)は、分子形状が球状(約0.33の傾き)か、ランダムコイル状(同0.5~0.6)、もしくは棒状(同1.0)かが決定できます。

図2により天然のアルギン酸ナトリウムは球状構造であり、放射線を照射した後のそれはスロープが0.88であり明らかに棒状に近い構造をした分子であることがわかります。

放射線照射によりアルギン酸ナトリウムの分子を球状で架橋したような構造から棒状に変化させていることがわかります。 これは照射により、分子が伸張したり拡張したりすることにより、架橋結合が破壊されると考えられます。

放射線を照射する前のアルギン酸ナトリウムと照射した後のサンプルの分子量の微分曲線。

図1:放射線を照射する前のアルギン酸ナトリウムと照射した後のサンプルの分子量の微分曲線。

RMS半径と分子量の関係

図2:RMS半径と分子量の関係。放射線照射前後では明らかに傾きが異なります。

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